「令和3年度下請取引等実態調査」の結果が公表

「令和3年度下請取引等実態調査」の結果が公表

国土交通省及び中小企業庁では、建設業法の規定に基づき、建設工事における下請取引の適正化を図るため、下請取引等実態調査を毎年実施しています。この度、「令和3年度下請取引等実態調査」の結果が公表されました。その調査対象が令和2年10月1日~令和3年6月30日における取引となっているため、「著しく短い工期の禁止」などの新たなルールが創設された建設業法改正(令和2年10月1日施行)後初の調査結果となります。

■調査の概要
・調査対象業者:18,000業者(うち回収業者数:14,338業者、回収率79.7%)
・調査方法:郵送による書面調査(令和3年8月2日~令和3年10月12日)
・調査対象期間:令和2年10月1日~令和3年6月30日における取引
・調査内容:元請負人と下請負人の間及び発注者(施主)と元請負人の間の取引の実態等、見積方法(法定福利費、労務費、工期)の状況、約束手形の期間短縮や電子化の状況、技能労働者への賃金支払状況等

■調査結果の概要
(1)建設業法の遵守状況
○建設工事を下請負人に発注したことのある建設業者(12,427業者)のうち、建設業法に基づく指導を行う必要がないと認められる建設業者(適正回答業者)は、1,343業者(適正回答業者率:10.8%(昨年度:10.9%))であった。
○このうち、「下請代金の決定方法」(98.6%)、「契約締結時期」(98.4%)、「引渡し申出からの支払期間」(98.5%)、「支払手段」(93.3%)などの調査項目については概ね遵守されている状況であった。
○一方、「見積提示内容」(21.2%)、「契約方法」(63.4%)、「契約条項」(47.6%)、「手形の現金化等にかかるコスト負担の協議」(37.5%)など、適正回答率が低い調査項目も見受けられた。

(2)元請負人による下請負人へのしわ寄せの状況
元請負人から「不当なしわ寄せを受けたことがある」と回答した建設業者は1.2%(昨年度:1.2%)で、その内容のうち、主なものは、「指値による契約」(12.5%)、「下請代金の不払い」(11.0%)、「やり直し工事の強制・一方的な費用負担」(10.6%)、「見積を全く考慮されなかった」(9.8%)だった。

(3)発注者(施主)による元請負人へのしわ寄せの状況
発注者から「不当なしわ寄せを受けたことがある」と回答した建設業者は0.6%(昨年度:0.7%)で、その内容のうち、主なものは、「発注者側の設計図面不備・不明確、設計積算ミス」(16.9%)、「発注者による理不尽な要求・地位の不当利用」(15.5%)、「請負代金の不払い」(13.5%)、「追加・変更契約の締結を拒否」(8.8%)だった。

(4)労務費の内訳を明示した見積書の活用状況【新規項目】
元請負人から下請負人に対し、労務費の内訳を明示した見積書の交付を働きかけている建設業者は66.3%で、下請負人から元請負人に対し、労務費の内訳を明示した見積書を交付している割合は67.3%だった。

(5)工期について【新規項目】
元請負人は下請負人から工期の変更交渉があった際に工期変更を認めている建設業者は94.7%だった。また、下請負人の工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らかにした見積書の交付は58.9%だった。

(6)約束手形について【新規項目】
手形期間を60日(予定・検討中も含む)としている建設業者は73.8%で、一方、手形期間を60日以内とする予定がないと回答した理由としては、「特に理由はないが、現在の手形期間が慣例となっているため」47.7%が最も多くなった。

(7)技能労働者への賃金支払状況
賃金水準を引き上げた、あるいは引き上げる予定があると回答した建設業者は82.8%(昨年度:79.3%)だった。賃金水準を引き上げた理由として最も多かったのは、「技能労働者の技能と経験に応じて給与を引き上げ(建設キャリアアップシステムの活用など)、技能労働者の処遇を改善する必要があると考えたため」39.4%だった。一方、引き上げないと回答した理由としては、「経営の先行きが不透明で引き上げに踏み切れない」41.5%が最も多くなった。

■調査結果のポイント
・建設工事を下請負人に発注したことのある建設業者(12,427業者)が回答すべき調査項目について、指導対象となる29の調査項目に対し、全て適正回答(適正な取引を行っていると回答)だった適正回答業者率は10.8%であり、未だ多数の建設業者が適正な取引を行っていない状況は従来同様で、建設業の取引において重要な項目でも適正回答率は低い状況。
・今年度新規の設問項目である「労務費の内訳を明示した見積書」では67.3%の建設業者が内訳を明示した見積書を交付しており、「工期」については94.7%の建設業者が、追加工事等が生じた場合、工期変更を認めていると回答し、また「約束手形」の手形期間を60日(予定・検討中も含む)としている建設業者は73.8%との回答でした。
この調査の結果、指導対象調査項目について、不適正な取引に該当する回答を行った建設業者11,084業者に対し、指導票を発送したということです。そのような事業者に対しては、是正措置を講じるよう指導を行ったということですが、さらに、必要に応じて、許可行政庁において立入検査等を実施することもあるということです。

詳しくは、こちらをご覧ください。
参照ホームページ[国土交通省]
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000190.html

 

関連記事

  1. 【経営】令和2年の労使間の交渉等に関する実態調査の結果の概況が公表され…

  2. 令和3年度の地域別最低賃金の改定額を取りまとめ

    【労務】令和3年度の地域別最低賃金の改定額を取りまとめ

  3. 「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化

    「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化

  4. 【経営】令和2年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました

  5. 【労務】脳・心臓疾患の労災認定基準、約20年ぶりの見直しへ

  6. 育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&Aを公表

    育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&Aを公表

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA