【経営】令和2年の労使間の交渉等に関する実態調査の結果の概況が公表されました

労使間の交渉等に関する実態調査は、労働組合を対象として、労働環境が変化する中での労働組合と使用者(又は使用者団体)の間で行われる団体交渉、労働争議及び労働協約の締結等の実態等を明らかにすることを目的とするものです。調査の範囲は全国となり、日本標準産業分類(平成25年10月改定)による16大産業を対象としています。労働組合の対象は、令和元年労使関係総合調査(労働組合基礎調査)で把握した労働組合を母集団とし、先の16大産業に属する民営事業所における労働組合員30人以上の労働組合(単位組織組合及び単一組織組合(本部組合、連合扱組合及び支部等の単位扱組合))のうちから、産業、労働組合員数規模、都道府県、労働組合の種類別に層化して無作為に抽出した約5,200労働組合です。

・調査の方法

厚生労働省から都道府県労政主管課及び労政主管事務所を経由して調査客体労働組合に対し調査票を配布(一部郵送を含む。)し、調査客体労働組合が調査票に記入した後、都道府県労政主管課及び労政主管事務所の職員が調査票を回収(一部郵送を含む。)して厚生労働省に郵送した。なお、インターネットを利用したオンライン報告方式を併用している。

・集計・推計方法

産業、労働組合員数規模等の区分ごとに復元倍率を算出し、復元倍率を用いて集計した結果から構成比等を算出した。

・調査機関

厚生労働省-都道府県労政主管課-労政主管事務所-労働組合

・調査客体数、有効回答数及び有効回答率

調査客体数5、161有効回答数3、335有効回答率64.6%

■結果の概要

1労使関係についての認識【本部組合及び単位労働組合】

使用者側との労使関係の維持についての認識をみると、「安定的に維持されている」51.1%(平成30年調査53.1%)、「おおむね安定的に維持されている」38.8%(同38.2%)であり、「安定的」と認識している労働組合は89.9%(同91.3%)、「どちらともいえない」6.3%(同5.2%)、「やや不安定である」2.4%(同1.4%)、「不安定である」1.2%(同1.6%)となっている。

2正社員以外の労働者に関する状況【本部組合及び単位労働組合】

(1)正社員以外の労働者の組合加入資格、組合員の有無

事業所に正社員以外の労働者がいる労働組合について、労働者の種類別に「組合加入資格がある」をみると、「パートタイム労働者」38.2%(平成30年調査35.6%)、「有期契約労働者」41.4%(同39.9%)、「嘱託労働者」37.4%(同35.6%)、「派遣労働者」6.1%(同5.2%)となっている。

また、労働者の種類別の「組合員がいる」についてみると、「パートタイム労働者」29.5%(同28.6%)、「有期契約労働者」31.5%(同31.1%)、「嘱託労働者」30.4%(同29.2%)、「派遣労働者」1.2%(同1.3%)となっている。

(2)正社員以外の労働者に関する事項別話合いの状況

過去1年間(令和元年7月1日から令和2年6月30日の期間)に、正社員以外の労働者に関して使用者側と話合いが持たれた事項(複数回答)をみると、「同一労働同一賃金に関する事項」40.5%(平成30年調査15.4%注7))が最も高く、次いで「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」38.3%(同38.9%)、「正社員以外の労働者(派遣労働者を含む)の正社員への登用制度」23.8%(同24.4%)などとなっている。

「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」を事項別にみると、「賃金に関する事項」31.7%(同30.2%)が最も高くなっている。

3事項別労使間の交渉に関する状況

過去3年間(平成29年7月1日から令和2年6月30日の期間。以下同じ。)において、「何らかの労使間の交渉があった」事項をみると、「賃金・退職給付に関する事項」74.9%(平成29年調査73.9%)、「労働時間・休日・休暇に関する事項」74.1%(同72.2%)、「雇用・人事に関する事項」61.0%(同60.2%)などとなっている。

事項別に「何らかの労使間交渉があった」組合のうち、「使用者側と話合いが持たれた」割合をみると「賃金額」92.1%、「職場環境に関する事項」90.3%、「賃金制度」89.4%などとなっている。

また、「何らかの労使間の交渉があった」結果、「労働協約の改定がなされた又は新たに労働協約の規定が設けられた」とする割合を事項別にみると、「育児休業制度、介護休業制度、看護休暇制度」37.5%(同39.9%)が最も高く、次いで「賃金額」37.1%(同36.0%)、「賃金制度」33.3%(同34.3%)などとなっている。

4団体交渉に関する状況

(1)団体交渉の有無及び交渉形態

過去3年間において、使用者側との間で行われた団体交渉の状況をみると、「団体交渉を行った」70.5%(平成29年調査67.5%)、「団体交渉を行わなかった」29.4%(同32.0%)となっている。

「団体交渉を行った」労働組合について、交渉形態(複数回答)をみると、「当該労働組合のみで交渉」85.3%(同83.9%)が最も多く、次いで「企業内上部組織又は企業内下部組織と一緒に交渉」12.4%(同12.4%)、「企業外上部組織(産業別組織)と一緒に交渉」4.4%(同4.3%)などとなっている。

(2)団体交渉の1年平均交渉回数

過去3年間に団体交渉を行った労働組合について、団体交渉の1年平均交渉回数をみると、「3~4回」34.5%(平成29年調査36.4%)が最も多く、次いで「1~2回」30.9%(同27.0%)、「5~9回」23.9%(同21.3%)などとなっている。

(3)団体交渉を行わなかった理由

過去3年間に団体交渉を行わなかった労働組合について、その理由をみると、「上部組織又は下部組織が団体交渉を行うことになっているから」57.5%(平成29年調査52.3%)が最も高く、次いで「労使協議機関で話合いができたから」18.8%(同22.8%)、「団体交渉を行う案件がなかったから」17.7%(同16.1%)となっている。

5労働争議に関する状況

(1)労働争議の有無、争議行為と第三者機関の関与の状況
過去3年間において、労働組合と使用者との間で発生した労働争議の状況をみると、「労働争議があった」2.7%(平成29年調査1.8%)、「労働争議がなかった」97.2%(同98.0%)となっている。
また、過去3年間に労働争議があった労働組合について、争議行為と第三者機関の関与の状況をみると、「争議行為と第三者機関の関与があった」32.7%(同26.0%)、「争議行為のみで第三者機関の関与がなかった」49.8%(同56.4%)、「第三者機関の関与のみで争議行為がなかった」16.1%(同17.6%)となっている。

(2)労働争議がなかった理由
過去3年間に労働争議がなかった労働組合について、その理由(複数回答主なもの3つまで)をみると、「対立した案件がなかったため」55.8%(平成29年調査53.7%)が最も高く、次いで「対立した案件があったが話合いで解決したため」34.7%(同38.5%)、「対立した案件があったが労働争議に持ち込むほど重要性がなかったため」12.5%(同11.7%)となっている。

(3)争議行為開始の際の状況【本部組合及び単位労働組合】
争議行為開始の際の状況についてみると、争議行為開始の際の使用者側に対する予告について「取り決めている」49.7%(平成27年調査64.5%)、「取り決めていない」49.0%(同34.6%)となっている。
また、「取り決めている」労働組合について予告方法をみると、「文書」93.1%(同86.5%)、「口頭」6.0%(同10.4%)となっている。
(4)争議行為開始の際の予告期間【本部組合及び単位労働組合】
争議行為開始の際の使用者側に対する予告について取り決めている労働組合における予告期間をみると、「24時間を超え48時間以内」27.4%(平成27年調査21.1%)が最も多く、次いで「期間の定めはない」26.4%(同27.7%)、「24時間以内」13.0%(同10.7%)などとなっている。

6今後における労使間の諸問題の解決手段

労使間の諸問題を解決するために今後最も重視する手段をみると、「団体交渉」50.7%(平成29年調査38.4%)が最も高く、次いで「労使協議機関」44.9%(同56.2%)、「苦情処理機関」0.9%(同1.2%)、「争議行為」0.9%(同0.4%)となっている。

7労働協約に関する状況

(1)労働協約の締結の有無
労働組合と使用者(又は使用者団体)の間で締結される労働協約の締結状況をみると、労働協約を「締結している」93.1%(平成29年調査94.8%)、「締結していない」6.8%(同4.6%)となっている。

(2)企業組織の再編・事業部門の縮小等における労働協約の承継に関する状況
【本部組合及び単位組織組合】
過去3年間に労働組合員が所属する事業所において「企業組織の再編・事業部門の縮小等が実施された」労働組合は24.0%(平成29年調査27.4%)となっており、そのうち、労働協約の承継についての労使間での話合いの状況をみると「話合いが持たれた」54.9%(同61.6%)、「話合いが持たれなかった」32.8%(同32.3%)、「労働協約はない」10.6%(同3.6%)となっている。

また、「話合いが持たれた」と回答した労働組合についてその内容(複数回答)をみると、労働協約の「労働条件その他労働者の待遇を定める規範的部分について持たれた」96.0%(同98.9%)、労働協約の「債務的部分(規範的部分以外の部分)について持たれた」22.3%(同9.9%)となっている。

詳しくは、こちらをご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/18-r02gaiyou.html

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