問題のある試用期間中の社員への対応について

Emotion People Argument Argue  - chiplanay / Pixabay

Q
当社では、就業規則で試用期間を3ヵ月と定めています。今回、試用期間中の社員に、遅刻、欠勤が多く、周囲との協調性に欠けるなどの問題のある者がおり、対応に困っています。

A
もう少し様子を見たい場合には、一定の要件のもとで個別に試用期間を延長することができます。なお、試用期間中及び試用期間満了時に本採用をせずに契約を解除することは解雇に該当するため、試用期間の当初14日以内の場合を除き解雇予告手続きが必要とされるほか、通常の解雇と同様に合理的な理由、社会通念上相当な理由が必要となります。

この様な対応には注意!!
試用期間中や試用期間満了時期にあたることをもって、改善のための指導教育等やその記録が十分でないにもかかわらず雇用契約を解除したり、試用期間延長後に勤務不良が改善しているにもかかわらず雇用契約を解除するとトラブルのリスクが生じます。

解説
トラブルになる理由、ポイント
試用期間の法的性質については、試用期間中に従業員が不適格であると会社が認めたときは雇用契約を解約できる旨の特約上の解約権が留保されているという「解約権留保付本契約説」が通説となっています。したがって、解約権は留保されているものの雇用契約は成立しているため、試用期間中や試用期間満了時期にあたることをもって、改善のための指導教育等やその記録が十分でないにもかかわらず雇用契約を解除した場合には、「正当な理由、社会通念上相当と認められる理由のない解雇」として解雇権の濫用とされ無効とされるおそれがあります。

解決例
これまでの指導教育等が十分でない場合には、「不当解雇」のリスクが発生することとなりますので、その時点で雇用契約を解除するのではなく、試用期間を延長することが考えられます。

試用期間を延長するためには、試用期間に関する就業規則等の規定に例外規定を設けて試用期間を延長することができる旨を明記しておくことと、試用期間延長に関する合理的な理由が必要とされます。本案件のような出勤不良であれば合理的理由と認められる可能性が高いため、まずは試用期間を延長したうえで、試用期間満了時に本採用とするための具体的な要件(出勤不良等が改善されること)を示した確認書等を交わしておく等の対応が考えられます。

なお、延長した期間において、出勤不良等が改善されれば問題はありませんが、改善されない場合においては、指導教育を重ねて当該記録を書面で記録しておくことや本人に懲戒を課して記録を残しておくようにし、本採用拒否による解雇の合理性・正当性を担保できるようにしておくことも必要です。

留意点
試用期間の延長は、試用期間中の者を不安定な地位におくものであるため、特別な事情や合理的な理由がなければ認められないことと、試用期間延長後に解雇する場合には期間延長前に存した事実だけをもって解雇することは許されないことに留意しなければなりません。

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