令和2年12月1日、首相官邸において、「第5回 成長戦略会議」が開催されました。会議では、実行計画(案)について議論が行われ、これが取りまとめられました。この実行計画は、令和2年7月に閣議決定された「骨太方針2020」に基づき、「新たな日常」の早期実現に向けて、主な施策項目について、ポストコロナ時代を見据えて、経済財政諮問会議の方針も踏まえ、成長戦略会議における有識者の意見を聴取し、中間的なとりまとめを行ったものです。今後、この実行計画を実行に移すとともに、最終とりまとめに向けて、与党の意見等も聞きながら、議論を行っていくこととしています。具体的な項目として、人への投資の強化も掲げられており、「雇用の維持と労働移動の円滑化」、「テレワークの定着に向けた労働法制の解釈の明確化」、「新しい働き方の実現」などが盛り込まれています。
【実行計画(一部抜粋)】
■ウィズコロナ・ポストコロナの世界における我が国企業の事業の再構築
1.旧来の事業を持続させる緊急時対応から、新たな日常に向けての動きへの段階的移行
ウィズコロナの時代がある程度の期間、続くことを考えると、従来のビジネスモデルを単に維持していくということは難しく、むしろ、積極的に構造改革を起こす必要がある。新型コロナウイルスの感染状況については、最大限の警戒感を持って対処する必要があり、政府の支援策も、雇用を守って事業が継続できるよう留意する必要があるが、他方で、「新たな日常」に向けて事業再構築を進める企業への支援に、感染拡大の地域の状況や企業業績の状況に十分注意を払いつつ、段階的に移行する必要がある。まず、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、前向きな取組を行う意欲のある中小企業・中堅企業については、危機的状況に追い込まれてようやく新規事業等に取り組むのではなく、可能な限り手前のステージにおいて、規模拡大、新分野展開、業態転換を通じた生産性向上などの事業再構築に挑戦することを支援する必要がある。このため、ポストコロナにおける中小企業等の成長及び生産性の向上を実現するため、第7章に記載のとおり、予算、税制上の措置等の施策を総合的に進める。
2.ビジネスモデルの構造改革や事業再構築を進めるための企業の投資の喚起
既存事業を含めた生産性の向上を図りつつ、生産性が低い事業の価値についての評価を行った上で、新陳代謝を図り、スピンオフや売却、撤退を進め、事業の再編を積極的に行っていくことが、既存大企業を中心に求められる。コロナ禍の厳しい経営環境の中で、「新たな日常」に向けて、カーボンニュートラル実現に向けた投資やデジタル・トランスフォーメーション(DX)投資、さらには事業再構築・再編に向けた投資に企業が取り組むよう税制措置を検討する。このため、ウィズコロナの期間に限り、赤字でも努力を惜しまず、こうした投資に果敢に挑む企業に限り、繰越欠損金の控除上限(※)を引き上げるなど税制上の措置について検討を行い、令和3年度税制改正において結論を得るとともに、2021年の通常国会に関連法案を提出する。
(※)大企業の繰越欠損金の控除上限は、現状、所得の50%までとなっており、今期発生した欠損金を来期以降の所得の50%まで相殺することとされている(最長でも繰越期間は10年間)。
(注)中小企業は、現状でも、所得の100%まで繰越控除が可能
これと併せて、新しい業態へ転換するためのスキル教育・リカレント教育も進めていくことも重要である。高度なスキルの習得も含めて、個人の学びを促進するための教育訓練給付金制度による支援、さらには企業による人材育成を支援するための助成を通じてリカレント教育を推進することで、個人に求められている能力、スキルを身につけられるように支援していく。
■ 「人」への投資の強化
1.雇用の維持と労働移動の円滑化
(1)試行的雇用の対象拡大、新たな人材教育支援、在籍出向の円滑化雇用の維持について、感染拡大の地域の状況や企業業績の状況に応じて、柔軟にその対応を検討する一方で、「新たな日常」に向けた労働移動の円滑化のため、予算・税制措置を含む支援を進める。具体的には、短時間労働者を含む離職者に対するトライアル雇用の支援やキャリアアップの助成、在籍出向の環境整備、職業訓練の強化などを図っていく。
(2)フェーズⅡの働き方改革
労働生産性の向上のため、多様な働き方が求められており、人事評価の在り方の見直しや、いわゆるジョブ型雇用を増加させていくことも必要である。これまでの働き方改革に加え、さらに、働き方改革を進めていく必要がある。
2.テレワークの定着に向けた労働法制の解釈の明確化
時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方として、テレワークなど新たな働き方の導入・定着を図ることが重要である。今回、コロナ禍でのテレワークの実施により、その有効性が確認された。一方で、課題も明らかになった。テレワークで生産性が上がるか否かではなく、「新たな日常」になることを前提とし、どうすれば労働生産性が上がるかを考えていくべきとの指摘があった。政府としては、テレワークの定着に向けて、新たなKPIを策定するとともに、中小企業によるテレワークのための通信機器の導入について支援の強化を図る。さらに、労働時間の把握・管理及び健康確保について、以下の方向で、労働法制の解釈の明確化を図る。
(1)労働時間の把握・管理
テレワークの時間管理について、労使双方にとって負担感のない、簡便な方法で把握・管理できるようにするため、ルールを整備する。具体的には、以下の方向で検討を進める。
①テレワーク時における労働者の自己申告による労働時間の把握・管理については、自己申告された労働時間が実際の労働時間と異なることを客観的な事実により使用者が認識している場合を除き、労働基準法との関係で、使用者は責任を問われないことを明確化する。
②(中抜け時間があったとしても、)労働時間について、少なくとも始業時間と終業時間を適正に把握・管理すれば、労働基準法の規制との関係で、問題はないことを確認する。
③テレワーク時には原則禁止であるとの理解があるテレワークガイドラインの「時間外、休日、深夜労働」について、テレワーク以外の場合と同様の取扱いとすることについて検討する。
(2)健康確保
長時間労働者・高ストレス者に対する医師の面接指導については、リモートでの面接指導も企業が柔軟に選択することができる旨を、テレワークガイドラインで明確化することを検討する。
3.新しい働き方の実現
(1)フリーランス
フリーランスについて、多様な働き方の拡大、高齢者雇用の拡大などの観点からも、これを安心して選択できる環境を整えるため、独占禁止法や下請代金法を適用することを明確化する一覧性のあるガイドラインについて、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省連名で年内を目途に案を作成し、意見公募手続を開始する。その上で、発注事業者とフリーランスとの取引におけるトラブルに迅速に対応できるよう、独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法に基づく執行体制を充実する。さらに、労働者災害補償保険の活用を図るための特別加入制度について、年内を目途に対象の拡大を行う。
(2)兼業・副業
我が国では、優秀な人材が大企業に就職し、長期間、同じ組織の中で仕事をすることが多いが、バックグラウンドが多様な者が多い組織のほうがパフォーマンスは高まるとの指摘もあり、兼業・副業の定着を通じて転職が活性化することは、日本の組織全体に好影響を与えるとの指摘があった。このため、企業が安心して兼業・副業を認めることができるよう、本年9月に、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定し、労働時間の自己申告制を設け、申告漏れや虚偽申告の場合には、兼業先での超過労働によって上限時間を超過したとしても、本業の企業は責任を問われないことを明確化した。大企業をはじめ、自社の従業員の兼業・副業が奨励され、兼業・副業する者を実際に採用していくことが重要であり、本制度の普及が極めて重要であるとの指摘があった。このため、ガイドラインの分かりやすいパンフレットや、労働時間の申告の際に活用できる様式の丁寧な周知等を図っていく。
4.無形資産投資・人的投資の促進
近年、研究開発投資、人的投資、デジタル投資といった無形資産への投資の重要性が高まり、産業競争力強化の重要な要素となってきている中で、我が国の場合、特に人的投資が諸外国に比べて少なく、これが労働生産性の格差にもつながっている可能性があることから、無形資産投資に対する政策支援を拡大すべきであり、具体的な方策について検討する。
詳しくは、こちらをご覧ください。
参照ホームページ[首相官邸]
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202012/01seicho.html
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