厚生労働省から、令和3年6月22日開催の「第12回 脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」の資料が公表されました。業務による過重負荷を原因とする脳・心臓疾患については、平成13年12月に改定した「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」に基づき労災認定が行われてきましたが、この認定基準の改定から約20年が経過する中で、働き方の多様化や職場環境の変化が生じています。
そこで、最新の医学的知見を踏まえた検証を行うために設けられたのがこの専門検討会です。今回、「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(案)」が提示されています。
■労働者の健康状態や労働時間等の状況
労働安全衛生調査(実態調査)及び労働者健康状況調査によると、平成14年以降、仕事や職業生活に強い不安、悩み、ストレスを感じながら働いている労働者は、約5割から6割で推移している。平成30年では58%の労働者が強い不安や悩み、ストレスを抱えながら働いている、となっています。
その内訳をみると、「仕事の質・量」、「仕事の失敗、責任の発生等」、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」に関するものが多く、その中でも「仕事の質・量」に関するものが最多で、59.4%の労働者が強い不安、悩み、ストレスを感じている、という結果が出ています。
労働時間の負荷要因の考え方については、次のように報告されています。
- 現行認定基準と同様に、「疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増すところであり、具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて、
① 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること
② 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断すること」を、引き続き示すことが妥当である。
さらに、この考え方に加えて、疫学調査の結果や支給決定事例等を踏まえ、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合的に考慮して業務と発症との関連性が強いと判断できる場合について、「労働時間以外の負荷要因において一定の負荷が認められる場合には、労働時間の状況をも総合的に考慮し、業務と発症との関連性が強いといえるかどうかを適切に判断すること」、「その際、労働時間のみで業務と発症との関連性が強いと認められる水準には至らないがこれに近い時間外労働が認められる場合には、特に他の負荷要因の状況を十分に考慮し、そのような時間外労働に加えて一定の労働時間以外の負荷が認められる場合には、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断すること」を、新たに示すことが妥当である。
また、勤務時間の不規則性の論点として、「勤務間インターバル」が重視されています。
例として、下記のように報告されています。
- 「勤務間インターバルが短い勤務」を勤務時間の不規則性に関する負荷要因の細目として掲げ、その検討の視点としては、「勤務間インターバルが短い勤務については、その程度(時間数、頻度、連続性等)や業務内容等の観点から検討し、評価すること」を示すことが妥当である。
また、特に睡眠時間と脳・心臓疾患の発症等との関係についての医学的知見を踏まえ、長期間の過重負荷の判断に当たっては、「勤務間インターバルが短い勤務については、睡眠時間の確保の観点から、勤務間インターバルがおおむね11時間未満の勤務の有無、時間数、頻度、連続性等について検討し、評価すること」との補足を示すことが妥当である。
上記は一例ですが、認定基準の見直しの方向性が示された資料となっていますので、参考に確認することをお勧めします。
詳しくは、こちらをご覧ください。
参照ホームページ[厚生労働省]
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