厚生労働省は、「外国人雇用対策の在り方に関する検討会」の中間取りまとめを行い公表しています。本検討会は、我が国の労働市場の動向や、その中における外国人雇用の状況を確認しつつ、アフターコロナも見据えた外国人雇用の在り方とその対応策について、具体的な方向性を議論することを目的として、厚生労働省職業安定局長が公労使の構成員の参集を求めて開催したものです。
厚生労働省としては、この中間取りまとめで示された対応の方向性を具体的な施策に反映できるように検討し、外国人労働者に対する支援をより一層充実していくとのことです。
■外国人雇用対策の在り方に関する検討会の開催趣旨
近年、我が国における外国人労働者の数は急激に増加し、この10年間で約3倍となっています。この間、産業構造も絶えず変化しており、国内では、様々な分野で、多様な技能を有する外国人労働者が活躍しています。
こうした中で、平成31年には、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお深刻な人手不足である分野に労働者を受け入れるため、新たな在留資格「特定技能」が創設されるとともに、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」に基づき、我が国で共に働き、共に生きる存在として、外国人を受入れるための環境整備が政府全体で進められています。
一方で、足下に目を向けると、新型コロナウイルス感染症の影響により、国際的な人の往来が一時的に停滞する等、社会活動に変化が生じ、様々な産業が打撃を受ける中で、外国人労働者にも影響が確認されています。
このように、複雑化する社会経済情勢の中にあっては、学識経験者や労使の代表による意見を聞きながら、雇用情勢の変化に応じた適時・的確かつ柔軟な外国人雇用対策を実施していくことが求められています。
このため、本検討会は、我が国の労働市場の動向や、その中における外国人雇用の状況を確認しつつ、アフターコロナも見据えた外国人雇用の在り方とその対応策について、具体的な方向性を議論することを目的として開催されました。
■検討結果
1:外国人雇用対策の在り方と方向性(総論)
(1)我が国労働市場への外国人労働者の包摂の状況や国際的な労働移動を適切に把握し、エビデンスに基づいた外国人雇用対策を講じるべき。
本検討会では、国内労働市場における外国人労働者の状況について、統計データによる客観的な把握に努めた。既存の統計やそれに基づく分析から、新型コロナウイルス感染症禍において、外国人労働者は、日本人労働者と比較して、離職しやすく再就職しにくいのではないかという課題が浮かび上がり、また、在留資格によって雇用状況に様々な違いがあることが明らかになった。しかし、外国人労働者と日本人労働者との比較を行うための客観的な情報の把握については、多くの課題がある。
また、国際労働移動は送出し国と受入れ国の経済発展段階を踏まえた構造的なものであり、欧米、湾岸諸国を含めてグローバルに行われている。外国人労働者は、送出し国の経済水準や教育水準を背景に、それぞれの学歴に応じ、様々なルートにより就労や留学先となる国を選択している。日本もかつては送出し国であったが、現在は受入れ国となっているように、社会経済状況の変化が、国際労働移動に変化をもたらす。このため、外国人労働者の雇用対策の検討にあたっては、国際労働移動の観点から、送出し国側の視点や、他の受入れ国との比較も踏まえた広い視野による検討が求められる。
外国人労働者をめぐる問題については、エピソードベースの情報にとどまらず、国内外の労働市場の動向の全体像をエビデンスに基づき客観的に把握し、取り組むべき課題や優先順位を明確にすることが求められる。その上で、我が国の労働市場における包摂の状況や国際的な労働移動のありようを適切に把握し、労働市場が円滑・適正に機能するための方策を検討していくことが必要である。また、検討にあたっては、多様なステークホルダーの参画を図るとともに、議論の過程を公開し、日本人、外国人双方に周知されるべきである。
(2)新型コロナウイルス感染症禍で起きている複層的な課題を解決するために、関係機関が得意とする分野を生かして、連携して対応していくべき。
新型コロナウイルス感染症禍に伴う入国や行動の制限等による経済への影響により、外国人労働者の雇用は、若年労働者や女性労働者等と同様、様々な影響を受けていると考えられる。他方で、外国人労働者は、その在留資格・国籍、所属する職場やコミュニティの多様性を背景に、外から見えにくい形で窮状に陥っている場合があると考えられる。困窮する外国人の中には、行政からの情報が届かず、自ら支援を求めることも難しい者がいると考えられるため、困窮する外国人を可視化し、教育や福祉、人道上の観点も含めて適切にアウトリーチを行うなど、様々なチャネルからの支援が必要である。
こうした状況下では、関係諸機関が連携して、解決に向けた取組を進めていくべきである。例えば、公共職業安定機関であるハローワークと、地域や家庭に対するアプローチを得意とする福祉・教育機関や、民間の支援機関といった様々な機関がそれぞれのリソースを持ち寄って対応することが必要である。
また、これまで、外国人労働者については、在留資格別の管理という視点が強かったが、新型コロナウイルス感染症禍という全世界的な危機の中においては、どのような在留資格、国籍であっても、それぞれの特性に留意しつつ就労支援等の労働市場への包摂を図ることが必要ということが明らかとなった。このためには、日本人と同様に、労働法遵守と人権の擁護、各種行政サービスへのアクセスを確保するとともに、外国人労働者がその有する能力を最大限に発揮するという観点から、労働市場が機能するための円滑かつ適正な職業紹介と採用、労働者のスキルの適正な評価等を確保することが重要である。また、外国人の幸福追求という観点も重要である。
(3)日本と母国の文化ギャップの克服や、専門的・技術的分野の外国人労働者の長期キャリアを前提とした就労環境を整備していくべき。
外国人労働者の職場・地域への望ましい定着の在り方を考える上では、外国人と日本人の文化ギャップや認識の相違が原因でトラブルが生じることが多い。例えば、外国人労働者の採用の場面では、企業が業務内容にかかわらず日本人と同等のコミュケーション能力を求める一方、外国人労働者が母国の雇用慣行を前提とした働き方を希望することなどによるミスマッチや、職場におけるコミュニケーションの場面で、日本人特有の言い回し等への認識の相違が原因でトラブルが生じることがある。
外国人の職場への定着のためには、外国人に対して日本の職場への理解を深めることを求めるのみならず、受入企業側に対しても外国人が働きやすい雇用環境を整備するよう働きかけ、両者のギャップを埋めることで、円滑な関係を構築できるような取組が進められるべきである。
また、留学を経て専門的・技術的分野の在留資格を取得する者は増加傾向にある。これら在留資格は、更新に制約がなく、日本に長期間滞在することを前提としていることから、在留資格の変更を含めた多様なキャリアを実現するための支援が行われるべきである。加えて、外国につながる子どもについても、労働市場や地域社会への包摂という観点から、適切な能力開発と在留資格の取得を通じ、自己実現を図ることができるよう、適切なキャリア形成支援を行っていく必要がある。
(4)まとめ:外国人雇用対策は、我が国の雇用や労働市場の質を向上させるという積極的な視点をもって推進するべき。
これまで述べた外国人労働者をめぐる課題の諸相をみると、外国人が抱えやすい課題がある一方で、我が国の労働市場の課題を反映している面がある。このため、外国人労働者に対する支援は、現下の状況を踏まえた特別な対応としての意味に留まらず、広く我が国の雇用や労働市場の質を向上させていくという点で、アフターコロナに向けての積極的な意味を持ちうるものである。
2:各課題とその対応に関する方向性(各論)
データ(整備の必要性)
・労働市場における外国人労働者の状況をより詳細に把握・分析すべき。
・中長期的には、日本人と外国人が比較可能な統計等を新たに整備することも含めて検討すべき。
国際労働移動(送出国の視点で捉える)
・国際機関の活動等への参画を通じて国際労働移動の状況変化を把握すべき。
・ポストコロナも見据え、外国人労働者にとって日本の労働市場が円滑に機能するための職業紹介のあり方等を検討すべき。
文化ギャップ(コミュニケーションの改善)
・職場で必要なコミュニケーション能力の見える化とそれに応じた研修、文化ギャップを克服する就業体験を促進すべき。
・外国人労働者の職業紹介や就業環境の向上を担う専門人材の育成を検討すべき。
支援(様々な要因で困窮)
・NPO法人等とハローワークが連携し、困窮外国人へのアウトリーチを強化すべき。
・地域コミュニティ等を通じた情報発信、データベース整備による求人開拓を強化すべき。
・帰国困難者が応募可能な短期求人を民間企業・職業紹介事業者に働きかけるべき。
職場定着(定着を見据えた受入れ)
・モデル地域と受入れから定着までの一貫した支援を実証し、成果を周知すべき。
・各種支援ツールも積極的に活用して、雇用管理改善指導・援助を行うべき。
留学生(国内就職の促進)
・大学とハローワークの連携協定の締結等、就職支援を強化し、成果を横展開すべき。
・就活や職場定着のための研修用モデルカリキュラムの普及を図るべき。
子ども(キャリアを拓く)
・キャリアコンサルタントの育成などキャリアアップを支援すべき。
・高校・ハローワーク・関係機関が連携して、親も含めた外国につながる子どものキャリア形成支援を試行的に実施すべき。
詳しくは、こちらをご覧ください。
参照ホームページ[厚生労働省]
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